新「道の駅」が「負の遺産」とならないように提言
2021年 06月 22日
共産党市議団は、開会中の第2回定例市議会で、来年12月に開業予定の上武道路沿線の関根・田口町に建設中の新「道の駅」の運営について、議案反対討論で市当局に提言しました。
民間事業者まかせにせず、市農政課が積極的に関与を
私は「道の駅の来場者が最も期待している農畜産物直売所をどのように運営していくかが、現時点でも明らかにされていません。
加工施設も含めて、事業運営が㈱ヤマトなどの運営事業者任せで、農畜産物の特産品や加工食品の開発、さらには農業後継者の育成策や新規就農者を確保する支援策など、道の駅の設置者である本市が農業振興に役立つ事業計画づくりに、なぜ積極的に関与しないのでしょうか。
地元南橘や冨士見地区の農家も高齢化し、現在、直売所に出荷している農家も多くが、「新設される『道の駅』には出荷できない」と言っています。
荻窪、大胡、富士見の既存の道の駅の直売所運営に大きな影響が及ぶにもかかわらず、各直売所の生産者の方々との十分な調整が行われていません。農家の皆さんの意見や要望を聞いて、道の駅の事業が前橋市の農業振興に貢献できるように、市農政課がもっと積極的に農家を支援して、直売所の魅力を高めるべきです。
「赤城山や市内観光の玄関口」にならないのではないか・・・・
私は「市長は『赤城を味わい、赤城を体験する道の駅をめざして、前橋観光の拠点、ゲートウエイの役割を果たす施設にする』と説明しています。しかし、道の駅への来場者が魅力を感じるような観光企画や、地産レストランもほとんど具体化されていません。赤城山も市内の美術館や文学館、臨江閣の観光施設も、花火大会や初市・前橋祭り・七夕などのイベントなどは、インターネットで検索すれば道の駅を経由しなくても誰でも直接訪れることができます。
全国の道の駅も、ほとんどがドライバーの休憩施設になっています。観光案内施設を効果的に使って来場者を周辺観光地に周遊させる効果を上げている施設はほとんどありません。川場村の道の駅・田園プラザも、長時間滞在型の最終目的地になっています。市観光政策課や前橋コンベンション協会は、道の駅を出発地として、赤城や前橋市の魅力を味わい体験する周遊、体験型の観光事業やツアー企画をどのように具体化するのかを全く明らかにしていないのも問題です」と強調しました。
3㍍の浸水危険地域なのに、防災拠点の役割が果たせるのか
さらに「『道の駅』の敷地全体が、洪水土砂災害ハザードマップで3メートルの浸水危険地域に想定されています。災害発生時の救援拠点や支援物資の集積配布などの防災拠点の役割を果たせなくなる恐れがあるにもかかわらず、細ケ沢川などの堤防嵩上げなどの洪水防止対策工事が県とも連携が図られず、全く具体化されていません。
本市において最も心配される集中豪雨など風水害時に対応でき切るような河川の浸水防止工事の実施とともに、浸水時に対応できる避難場所の確保を、建物設計に反映させるべきです」と求めました。
そもそも、道の駅の総面積7㌶・施設規模が大きすぎるのではないか!
…建築工事の契約議案に反対
共産党市議団は、既存3カ所の道の駅の運営との共存共栄を前提にしたうえで、上武道路沿線に新しい道の駅を新設すること異論はありません。
しかし、現在進められている新設「道の駅」の整備事業については、現状のまま進めれば将来は『負の遺産』となりかねないという立場から、㈱ヤマト・宮下共同企業体との24億3100万円の建築工事請負契約を認めませんでした。(他の全会派は承認)
すでに7㌶の用地買収を完了しましたが、建物も含めて施設規模が県内最大で過大です。
上武道路の平日24時間交通量からみても、同規模の全国の幹線道路沿線に整備する道の駅の標準的な面積は、2㌶程度です。前橋市は、民間事業者に資金を求める整備手法を採用しましたが、総事業費は約100億円、本市の財政負担だけでも建設費約49億円、15年間の指定管理料24億円、合計73億円にも及ぶ大型事業となっています。
本市は、人口減少による税収減などによって財政運営がますます苦しくなっており、コロナ感染防止対策はもちろん、老朽化が進む多くの道路や市営住宅など都市インフラを含む各種公共施設の維持管理と更新事業、少子高齢化対策の多くの施策の展開に必要な財源が不足し、地方債の発行と財政調整基金の取り崩しをしなければならないときに、事業の費用対効果を慎重に検討しないまま、県内最大規模の道の駅を新設することは、無謀であり市民合意は得られません。